ひと頃テレビ広告で、売上ナンバーワンとうたわれていた洗顔石鹸(2004年3月発売開始、「茶○○○く」)を使用して、瞼の浮腫(腫れ)や顔の膨疹、鼻水、クシャミなどの症状が出る患者さんが2009年ごろより出てきました。当院でも、この石鹸を使い、瞼が腫れた患者さんを経験しましたので少しお話したいと思います。
瞼の腫れは、この石鹸に含まれる加水分解小麦が原因でおこるアレルギーの症状です。加水分解小麦とは、小麦を酸や酵素で処理したもので、同石鹸には湿潤剤として加えられていました。(注;今年5月より、加水分解小麦を加えていた過去の石鹸の回収が行われています。)
「小麦アレルギー」というと、小麦を食品として食べることによって経口感作し、小麦摂取後に運動したり消炎酵素剤(アスピリン等)を服用したりして、抗原が吸収されやすくなると、全身の膨疹などの症状がでるといったものですが、瞼の腫れは、石鹸に含まれていた加水分解小麦に経皮感作したものと考えられます。経皮感作した患者さんが小麦含有食品を食べた後、抗原が吸収されやすくなり症状を呈したのではないかと考えられます。朝その石鹸で顔を洗い、朝食にパンを食べた、或いはお昼にうどんを食べた後から瞼の浮腫をきたすといった症状です。治療としては、同石鹸の使用を中止し、抗アレルギー薬の投与、症状や発症頻度に応じて小麦の摂取制限を行います。
日本アレルギー学会は、今年の7月に「化粧品の中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」を設置し実態把握に乗り出しました。
瞼の腫れを訴えて受診される方が結構おられます。患者さんの思いもかけないものが原因だったということもあります。我々はしっかり、問診しなくてはいけないと再確認した次第です。