眼圧検査、OCT検査や視野検査などで「緑内障」と診断されると、眼圧を下げる作用のある目薬が出されます。緑内障では、眼圧を下げる事が、その病気の進行を抑える唯一のエビデンス(データによって客観的に証明されたこと)なのです。初期の緑内障では全く自覚症状がなく、ドックや健康診断で偶然見つかったりします。我々は、緑内障について十分説明をして治療が始まるのですが、いつしか来院が途絶えている患者さんもおられます。それはいったいどうしてでしょう。
2010年9月に行われた緑内障に関するあるアンケートがあります。患者さんが受診をやめてしまった理由として、以下のようなものがありました。
などがあります。
いずれも、そうだろうなと思いました。緑内障は痛くも痒くもありません。初期には視力も良好です。緑内障は視野に異常が出て、暗点という見えない場所が生じます。しかし、普通我々は両眼で物を見ているので、両眼の視野を重ね合わせて見ています。ですから、視野が良い目が悪い目をカバーするため、暗転が自覚しにくいのです。緑内障でいったん見えにくい場所ができれば、そこを見えるように治すことは出来ません。見えにくい場所(暗点)が広がらないようにするのが緑内障の点眼治療なのです。視野異常の進行を目薬で押さえるのが治療ということです。緑内障手術さえすれば緑内障が治るとおもっている人がいますが、それは間違いです。何種類かの目薬で眼圧が押さえきれず、視野がどんどん悪くなる場合、緑内障の手術をします。手術は、眼圧を下げるのが目的で、緑内障がよくなることではないのです。
我々が、目薬の副作用を説明するあまり、その不快感から目薬を使わなくなる人もいます。高齢者ではうまく点眼できない、目薬の容器が硬すぎて使いにくいといった面もあるようです。私たち医療側も、薬の必要性を繰り返し説明し、治療が中断し患者さんの緑内障が悪化しないように、努力と工夫を重ねていきたいと思っています。